犯行の動機もいまひとつ明確でない、若い方の男にしてみりゃ何故自分が参加させられているんだかも不明。とにかく「サスペンス」ものとしては消化不良だ。

だからこそ妙にリアリティが匂ってくる。何もかもが分からない状況は観客をもソレと同様の状況に落とし込める。

だが、よくありがちな作品ならばラストの大どんでん返しに向かって、強引な辻褄合わせをしていく。それが上手か下手かで作品の評価が下されるのである。

しかし本作は違った。辻褄合わせどころか、何もかも突き放して終わる。これは怖い。

これでは「ホラー」である。この事件の真相は、こうでした。なんていう親切な謎解きも無く、何か得体の知れぬモノに巻き込まれ、踊らされ、そして殺されていく。「サスペンス」の終わり方では無い。まさしく「ホラー」。だから怖い。

そのうえで『es[エス]』や『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』と同様にこういった低予算の新感覚作品が大作を凌駕していく様は小気味良い。かつてのスピルバーグを彷彿とさせやしないか？今後も期待感を抱かせる作品の登場だと思う。多少の突っ込みどころに目を瞑るのも今後の期待感からである。

ただね、あの密室でのふたりの心理戦はいくらでも深く細かく描写できた筈ですよね。そこら辺りを膨らませる事が出来たのならもっともっと凄い作品になった筈なので、そこが大変残念ではあった。