[コメント] レディ・ジョーカー(2004/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
原作既読。新聞記者の件をバッサリ削っている訳で、すると総会屋絡みの描写がほとんどなくなり、被差別部落と大会社の考察も激減してしまった。しかし、そのようなものとして観れば、それなりに纏まっている。
終盤、長塚京三の社長が渡哲也の元に、渡の兄の仏前に参りに来る。この件はいいものだと思った。長塚は脅迫関連の50年前の手紙を携えている。だからこのとき長塚は、渡を犯人と疑っているのかも知れない(確信していてもおかしくない)。しかし、全く気に留めていないのかも知れない。映画はここを全く語らない。このニュアンスに万感のものがこめられた。
ここで長塚がビールを土産にしているのが、ビール好きだった兄の追悼でいい泣かせなんだが、しかしこれ、本物のグリコ森永だと板チョコにでもなるのだろうか、と思うと笑ってしまうものがあった。本作、映像としてグリコ森永事件の記憶をよみがえらせる細部があっても良かったのではないのだろうか。片仮名の踊る新聞記事の美術など見てそう思った。
いっそのこと、あとは渡が知的障碍の娘と一緒になる描写だけで、映画を終わらせても良かったのではないだろうか。徳重聡の格好いい刑事の終盤はどうでもいい(原作でもやたら長々描かれる)。長塚の社長が特別背任、副社長の岸部一徳が逆に記者から突かれて退散という収束もつまみ食いで、判り難く不親切だっただろう。
俳優単位では良好で、私は長塚の他、コリアンの吹越満と総会屋の松重豊が面白かった。ここの処は掘り下げれば面白かろう(原作も掘り下げられていない)。東映と日活のロゴが連続するOPは実に奇怪で慣れない。
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