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[コメント] 岸辺のふたり(2000/英=オランダ=ベルギー)

穏やかで、優しい映画。…と、観た時は思っていた。[テアトルタイムズスクエア]
Yasu

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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観た後でこのページにやって来ると、既コメントでエンディングの解釈についての疑問が飛び交っているのを目にした。実はこの点、観ている時はそれほど気にかけていなかったのだ。せいぜい「ああいうオチにするのが一番いい終わり方だと思ったのだろう」程度にしか考えていなかった。

なぜ娘は若返った姿で父親と再会したのだろう? 改めて考えているうちに、だんだん不穏な解釈が頭をもたげてきたのだ。

実は、娘は天国へ行ったのではないか。

父親が舟で漕ぎ出していった川には、常に水が流れていた。娘の少女時代、若い頃、結婚して子どもができてからも、川には水が満ちていた。

いつも岸辺に来て、向こう側を見ていた娘のことだ。きっと娘は向こうへ渡りたかっただろう。できるものなら、いつまでも父親を待つことなどせずに、自分で渡っていきたかったはずだ。娘にそれをさせなかったのは、ただそこに川の流れがあったからだ。

しかし、娘が年老いた時には、川は干上がっている。なぜかは分からない。だが、それまで常に流れていた川の水がなくなったことで、娘はとうとう渡っていく。向こう側へと、「彼岸」へと。もしかすると、娘が「彼岸」へ渡るに相応しい年齢に達したことと、川の流れがなくなったことには何か関係があるのかもしれない。あるいは、娘に「彼岸」へ渡らせるために、川の流れがなくなったのかとも思える。

そして娘は発見する。父親が乗っていった舟の残骸を。父親が此岸に帰ってくるはずはなかったのだ。父親はずっと向こう側にいたのだから。

真相を知った娘はその場に座り込み、そして横たわる。

──そして「奇跡が起きる」(あらすじより引用)わけだが、なぜ娘は若返るのか? 以上のように「彼岸」へ渡った…という解釈なら、娘は天国で父親と再会したということになる。天国ならば“老い”というものがなくても不思議ではなかろう。再会した父親にしてからが、まだ幼かった娘と別れた時そのままの姿で現れているのだ。

…というわけで、考えた結果、この作品は「穏やかだが、悲しい映画」にその印象を変えた。もっとも娘にとっては、愛する父親と再会できたのだから、自分が死んだということなどは些細なことなのかも知れないけれど。

もちろん、悲しいからといってこの作品への評価は変わらない。愛する人に思いを込めた素晴らしい作品だと思う。いつか自分に娘ができたら、二人でもう一度観たい。

(評価:★4)

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