[コメント] エル・スール -南-(1983/スペイン=仏)
ファーストシーンに、この映画のすべてが凝縮されている。その語り口の簡潔さ、完璧さにまず吃驚させられる。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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暗闇のタイトルバックに窓の光が少しずつ浮かび上がる。ベッドで目を覚ます少女。飼い犬が吠え、夫の不在に取り乱す母親の声が聴こえてくる。次第に明度を増す部屋。枕元に振り子を見つける。今度は父が帰ってこないことを確信した、とのモノローグ。
時間にして僅か5分足らずであろうか。ただこれだけのファーストシーンに、この「エル・スール」という映画のすべて、そしてここに描かれる家族の十数年のすべてが詰まっている。
映画の中で、時を経るごとに、少女と父親の間の、優劣関係の逆転が表現されていくのが見事。胎児の性別や井戸の在り処を言い当てる、霊験高らかな父親に対する畏敬の念は、娘が成長し、父親の秘密を知るにつれて次第に色褪せていく。レストランでの食事シーンにおける対話は、父と娘の優劣の逆転を決定的なものとする。そして、父は去り、娘は父が捨てたエル・スール-南-へと旅立っていく。
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