[コメント] Ray レイ(2004/米)
それぞれのエピソードはレイ・チャールズという天才を語るに不可欠なものなのだろうが、今ひとつ自分の胸に響いてこない。むしろ、これは平均的なスターミュージシャン像だと見えて仕方がないのだ。
薬物依存で身を滅ぼしたアーティストの多さ、またそこから生還したアーティストの物語は枚挙に暇がない。女性問題でトラブルを巻き起こすスターの話など聞き飽きるほど聞いた。正直、この程度のエピソードに一喜一憂するほど観客はウブではないだろう。まして盲目の天才ミュージシャンと言われても、我々はスティービー・ワンダーの名をすぐに想起することができる。それゆえに、偉大なミュージシャン、レイ・チャールズの裏にこのような苦難が存在していたのだ、と言われても、「はあ、そうですか」くらいの返答をする程度にしか自分は心を揺り動かされなかったのだ。
強いて言えば、彼の偉業は黒人差別を糾弾して故郷ジョージアでのコンサートをキャンセルしたくらいのものだろうが、それとて映画を見る限りごく付和雷同的にかかわったイベントであり、キング牧師やモハメド・アリのように積極的にかかわった真の偉業とは到底呼べないものだ。それゆえ、「我が心のジョージア」が故郷で州歌に選ばれたといっても、感動と呼べるものが心を満たすには至らなかった。
だが、それでいいのではないか。それらの行為は積極的に褒められるべき事柄ではなければ、チャールズの才能を否定せざるを得ない事柄でもないのだ。これは凡庸な「天才の一代記」である。その映画から汲み取れる感動はほとんどなくても、チャールズの才能には何らかかわるものではない。そういうものだろう。
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