[コメント] アンダルシアの犬(1928/仏)
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(以下,別の掲示板に自分(HNはワトニイではない)で投稿した文章を引用)
この作品は凄い。こんなに古い映画(ルイス・ブニュエル監督,1928年)なのに…などと考えなくても,凄い。今観てもぜんぜん古くない,斬新である。
十数分の短い時間の中でめくるめくような幻影が紡ぎ出されていく。剃刀で眼球を切る冒頭のシーンに始まって不可思議としか言いようのない場面が続き,何の脈絡もなく場面が転換する。
どういう繋がりがあるのかと考え込んで思考を止めてしまうと,場面はさらに別の世界に移っている。映像技術は明らかに現代より劣るはずなのにそうした古さを全く感じさせない,それどころか最近の大作より遥かに不可解でインパクトがある。
数多くの印象深いシーン。手を這い回る蟻,自転車に乗る盲目の男の背中とオーバーラップする風景。ロープでピアノを引き擦ると,その先に結わえ付けられている若い僧侶のような二人が引っ張り出され,さらにその先に繋がっている壁がボコリと崩れて抜けてくる。部屋の窓から女性が帽子を投げると,落ちた先は海辺だった…。
ラストで,砂の中に人が埋まって首や上半身だけが見えているシーンが「春」とか何とかいう字幕のあとに出てくる。唐突なこの終わり方も印象的である。 このラスト,フェリーニの「甘い生活」のラスト−砂浜にマンボウみたいな大きな魚の死骸が打ち上げられている−の退廃的な雰囲気にちょっと近いものを感じた。もちろん,こちらの方がずっと先である。
それにしても,観終わった後のこの何ともいえない余韻は何だろう。
何かを訴えるという映画ではもちろんない。それにもかかわらず,この短い上映時間の中で描かれているシュールで不可思議な世界観は,他の映画では決して味わえないものだ。
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