[コメント] アレキサンダー(2004/米=英=独=オランダ)
映画を見終った人むけのレビューです。
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3時間近い大作だが、平原での大合戦となった「ガウガメラの戦い」など派手に戦闘シーンを描き、さらにこれが空中庭園かと思わせるような、絢爛豪華なバビロンの都、そこから東征に赴き、雪の山脈を越え、少数山岳民族との婚礼、インドの密林地帯に向かい、そこで象を操る軍隊と戦うという、げっぷが出るほど盛りだくさんの内容。しかし見終わってみれば、意外に上手にまとめられているように思えた。
アレキサンダーの東征は、何を意図して行われたのか、今もって謎が残されている。結果として、後に東西の文化・民族が融合した「ヘレニズム世界・文化」と呼ばれるものをもたらしはしたが、果たしてそれが、アレキサンダーの意図したものであったのかどうか?
また、古代ギリシャの全盛期から数百年近くにわたりギリシャを脅かし、当時は世界最大にして最強と思われたアケメネス朝ペルシャを滅ぼし、10年に及ぶ東征を支えた支配体制=帝国を、歴史のスケールで見ればあっという間につくり上げ、そしてその死後、あっという間に分裂した、まさに彼一人の帝国はなんだったのか?
これらの興味尽きない問題は多いが、この映画は、それに解答を与えるというよりも、それについてのオリバー・ストーンの解釈を、骨太な構想のもとに映画によって示したもの、ではないだろうか。
前半の、長年の宿敵であり、何度か戦い、ある意味では互いに見知っているペルシャとの大決戦・「ガウガメラの戦い」では、我々も他の映画などで見たことのある、古代の大合戦が繰り広げられた。
そこからアレキサンダーの軍隊は、当時の「世界の果て」を目指し、次々と未知なる世界へと突き進む。バビロンの都は、ややギリシャ式とは違うが、そのきらびやかさで同じ人間の欲望を満たすものと理解される。そこからはるかな山々を見上げる雪深い山脈へすすみ、さらにインドの密林地帯に入る。それらは、彼らが初めて目にする光景ではあったかもしれないが、それでも「ただの」自然の風景に過ぎなかった。
そしてこれまでのだだっ広い平原とはまるで違う世界で、しかも見たこともない巨大な四本足で、さらに大きな腕のような鼻を持つ「象」という不思議な動物を操るインドの軍勢との戦い。これこそ、まさに異文化との遭遇そのものではなかっただろうか。
この未知なるものとの闘いにおいて、初めてこの映画の中でアレキサンダーの軍隊は、たじろぎ、臆しながら進み、ついには「退却しろ」という声があげられた。
同時に、思う存分、大作映画の雰囲気と、カリスマ的な雰囲気を持ったアレキサンダー大王の描き方など、こういういかにもといった、仰々しいのは私は大好きだ。
これを見て、あらためて「アレキサンダー」という人物に興味がわいてきた。こういうことがあるから映画を見るのは楽しい。
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