[コメント] ライフ・アクアティック(2004/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
たとえば、ベタを恐れず私が面白いと思うところをほんのいくつか箇条書きすると、以下の通り。
・「きみは出資会社の手先だろう」「私だってその前に人間です」
・ぐるぐる船内を回るのだけど、ケイト・ブランシェットにあっさり追いつかれる。
・「クジラの歌っているのが聞こえるか?」(ヴォーッ)「いい声だ。何て歌ってるのかな?」「いまのはヘドロ運搬船だ」
・「ネッドと寝てるのか?」「あなたに関係ないでしょっ!」「オーケー、寝てるの?」「ノ〜、寝てないわ」
・「金庫はない」
・肩、ナタ、痛い。
・「しまった、ヒルだ、みんな、つまみとれ!」「・・・?」
・ホテルの回転扉から犬が飛び出してくる(!)。
・海賊に撃たれたけど、それでも結構ピンピンしてて、ヒョコヒョコと走るジェフ・ゴールドブラム。ぴちぴちのTシャツには"I'm a Pepper."の文字。
・砂浜でカニを丸焼きしている男の子は友だち(「メルシィ、セドリック」)。そういえば、電話でも「親切な少年」って言ってたね。
・「いつもB班です」と屋上で駄々をこねるウィレム・デフォー。「お前がA班だ」と言われた瞬間は雨に濡れて『プラトーン』のお顔。
・ビル・マーレイ とオーウェン・ウィルソンの会話を画面の奥でサングラスをかけて見守りながら、こっそり一緒に「ホー」をしているウィレム・デフォー。
・旗のイルカの上にイニシャルを縫い付けてもらったことに感涙するあまり思わず怒鳴ってしまうウィレム・デフォー(「気に入ったっていうだけじゃないんだよ!!」)。
・「これは私のエスプレッソ・マシンでは?」とふと気がつくジェフ・ゴールドブラム。でも、怒ったりしない(「お互い悪い夫だったな」)。
・というか、船室のじゅうたんの上で優雅にくつろぎすぎだ、ジェフ・ゴールドブラム。
上映で始まり上映で終わる構成といい、ホテル潜入作戦で頂点に達するカメラネタ(「誰か敵を見たか!?」)といい、あたかも放送事故かのような墜落事故シーンといい、細かいことを言い始めれば一筋縄では行かない映画であるに違いないが、上記のようなもっと細かいことがいっぱい気になり始めると、もともと一筋縄で行く必要なんかなかっただけなのだと分かる。ポルトガル語(と、エンドロールで教えられる)で弾き語りされるデヴィッド・ボウイに、「そうか、デヴィッド・ボウイの歌がデヴィッド・ボウイの歌であるためにたとえば英語のロックでなければいけない理由なんかどこにもなかったのか」と意表をつかれるが、これはそのままこの映画の感想。映画が映画であるために正しく何かである必要などまったくないのだ(と、最後まで細かい話を失礼)。
公開から五年も過ぎて初めてDVDで鑑賞して、劇場公開時に恵比寿の映画館でポスターを横目に眺めつつチラシを持ち帰るだけで済ませてしまったそのことを心の底から後悔したのだけれど、そんな本気の後悔すらどうでもよくなるくらいに出会えたことが嬉しい作品。探して読み返してみるとそのチラシには、「映画を信じていままで生きてきたのは、決して間違っていなかった・・・そんな思いをありがとう」という中原昌也氏のコメントが載っていたけれど、私としては、この感謝の言葉のあとに「ちゃんと話を聞け、気に入ったっていうだけじゃないんだよ!!」と、この映画に関わったすべての人たちへの怒号を付け加えずにいられない。傑作。
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