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[コメント] エレニの旅(2004/ギリシャ=仏=伊)

現代においてまさに映像作家たる孤高の表現をぼくたちに見せてくれるのはアンゲロプロス以外にはいないのではなかろうか。本作は舐めるような流れるようなカメラが実に人の苦悩の歴史を写し、その映像は気品の高い宗教画の如し。
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あまりに全編美しすぎるので画面に釘付けになってしまった。吐息しか出せないぐらい堪能させてもらった。

でも、彼の作品中でもこんなペシミズムはひょっとしたら初めてではなかろうか、と思えるぐらい、明るさ、希望をほとんど見出せないままに3時間は終わる。

話の主軸はギリシャ国自体の難民性なのだが、同じような題材でも「旅芸人の記録」と違った視点で描いている。すなわち、一人の孤児の女性にギリシャ国自体を体現させるといった風な、、。

彼女のラストの慟哭は彼女自身のそれではなく、戦後の困難を予感させるギリシャ自体の慟哭でもある。ギリシャの戦後は他の国が急速に民主化を迎えたのに対比し、さらに軍事国家的な政治体制に巻き込まれ民主主義を生み出した国とは思えないぐらい暗い不幸の奈落の底に落ち込んでゆくことになるからだ。

アンゲロプロス、ある程度の高さに到達したと思っていたが、この作品でまたまた勢いをつけ、どこまで行くのか次作が大いに楽しみだ。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)寒山拾得[*] けにろん[*] chokobo[*] Keita[*]

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