[コメント] ミリオンダラー・ベイビー(2004/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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上映後、照明が点灯するまで「立ち上がれなかった」なんて体験はいつ以来だろう。それほどこの映画は私に「衝撃」を与えてくれた。そう、それはまさに「衝撃」であった。
サクセスストーリーから一転して尊厳死問題に触れる展開は、例えば『ロッキー』のような映画を期待していた人にはかなり重いだろうし、そのあたりは観る人によって評価がはっきりと分かれるところで、それは致し方のないことであろうと思う。しかし、その評価はどうであれ、ここで描かれている物事は痛いほど私達の心に染みてくる。だからこそ観客はこの映画を心から愛し、また嫌悪するのだ。
とにかく役者が素晴らしい。特にオスカーを受賞したヒラリー・スワンクとモーガン・フリーマンは本当に文句のつけようがない素晴らしさだ。ここは素直にヒラリーの完璧な熱演と、モーガンの念願の受賞を称えておきたいと思う。
また小クレジットの脇役陣の存在感もこの映画をグッと色濃いものにしていた。そのあたりも忘れずに書き記しておきたい。
そして忘れてならない我らが御大クリント・イーストウッド。前作『ミスティック・リバー』といい今作といい、非常にシンプルで丁寧な、全体としてはむしろ抑え気味ですらある演出が目立つが、ここでもそれがかえって役者の演技の妙を引き出して素晴らしい効果をあげている。撮影に関しても、どうしても室内シーンが多くなり暗いシーンが多くなってしまうところに早朝の浜辺でのランニングシーンを挿入するなど、さり気なくメリハリが効いていて上手いなぁと唸ってしまう。また、これも前作に引き続き彼が手がけたものだが、音楽が実にいいのだ。この音楽にやられた人も多かったのではないかと思う。
とにかく素晴らしい演出だった。確かに重い映画ではあるのだが、その完成度という点においては、例えて言うと、金をはたいてでも買い取りたくなる店が出すレモンパイの味わいとでも言うべき、素朴だが本物の味わいが感じられる映画であった。
いや、本当に素晴らしかった。奇しくも40歳という節目の誕生日に鑑賞したこの映画を私は一生忘れないだろう。
まさに100万年語り継がれるべき大傑作(ミリオンイヤー・ムービー)とはこの映画のことである。
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