[コメント] 空中庭園(2005/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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コンビニで娘に声掛けられた時の、振り向きざまの小泉の表情。昔働いてた職場で、いつもまさに貼りついたような笑顔を作る同僚の女の子がいまして。こちら数人がエレベーターに乗ろうとするのを視界の端に捕らえていながらも、必死になって中で「閉じる」ボタンを連打して扉を閉じたこと、今でも記憶に焼きついています。まさにあの表情そのままでした。周りの全てから必死に身を守ろうとする、手負いの獣のような。その後彼女は仕事辞めてしまいましたが、その頃には目の下の隈が隠せないほど深くなっていて。今でも時々彼女のことを思い出します。
…ということもあって、話自体は面白く観れたのですが、映画としてはやや不満。全編にわたる(反復揺れのカメラだけではなく)心象風景まがいの映像表現。主人公が現実とはズレた世界を見ていたワケなので、ある意味理に適った手法だとは思うのだけど、いかんせんあまりに説明的。「この表現はこういうことを表しているんですよ」というあからさまな説明が、ことあるごとに聞こえてきそうな。「彼女(彼)たちには世界はこう見えてるかもしれない」という表現とは幾分ズレてて、それのみで独立し得る物語にあらためて説明を被せているに過ぎない、そこまで必然性が感じられない、というのか。そんな意味合いで、あくまで心象風景「まがい」の域に留まっていると思いました(拙い説明でよく分からないという方は、もしよければ『赤い砂漠』という映画を観てみて下さい。あれがまさに物語の主人公の視線を通した世界、心象風景が作品の血肉になっている、と思うのです)。
さらに不満を言えば、セリフももう少し切り詰めたり選んだりできなかったのかなぁ、と。「地に足のついた生活してないんだよ」なんて言われなくてもキーワードは観れば分かるし、「モノじゃないけど行きたいところがあるの」なんて言われたら、次は野猿のシーンになるのが容易に予想できてしまうし。なので、話の展開が(というか次に何がくるのかが)もう予想通り、ということが意外に少なくなかった気がします。
ただラストに関しては、個人的には結構好きです。あえて観る側に解釈が委ねられているような気がしました。主人公が開いたあの「扉」にはなにか意味が込められているのか、ということを。これは非常に映画的な「扉」だと思います。[3.5点]
(2006/6/14)
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