[コメント] スクラップ・ヘブン(2005/日)
未来(レビューはラストに言及)
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
私は『アカルイミライ』のレビューで、曖昧さを保つことにより未来は未来たりえると書いた。本作でもそのことを意識した。
「大人になること」が、分別をわきまえ個の欲望や苛立ちを押し殺すことだとしたなら、今の社会は昔以上に「大人になること」を強制する社会になりつつある。それまでは見えざる存在であった若者を、「働かない」「怠惰な」存在「ニート」としてあぶり出し可視的にして、統制を強めていく社会。
反抗の手段も巧妙に奪われ、大きな流れに従順なほうが得をする社会へのオダギリジョー の痛烈な皮肉、「想像力が足りないんだよ!」。この言葉は今だからこそ、確かな強度を備えている。
揺れ動き翻弄される凡人の役割を一手に引き受ける加瀬亮。アメリカン・ニューシネマの主人公のように「無様に」死ぬことも許されない。独り残された彼は今後、「想像力」を働かすことができるのか、それとも柄本明のごとく死んだように生きていくのか、あのラストは何も示唆をしていない。でも、何も示されないからこそ未来は未来たりえているのかもしれない。吹きさらしのまま、荒ぶる未来。
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