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[コメント] 若者のすべて(1960/仏=伊)

ビスコンティ自身が最も好きな作品。観る人の心を打ちのめす映画です。
ルッコラ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ルキノ・ビスコンティ監督の故郷ミラノが舞台です。この映画のアラン・ドロン=ロッコはくろねずみ様のおっしゃるようにまさに「天使のよう」です。ここまで素晴らしいドロンは、クレマンメルビルアントニオーニといった名監督の作品でも出会えなかったでしょう。ビスコンティの演出力。マリア・カラスでなくとも最高の演出家であることは認めざるを得ません。(いきなり、ちょっと贔屓すぎかな?)でもロッコは風貌や心根が「天使」であっても、愛する人達を救えませんでした。天使になれなかった、翼の折れた天使。そのもどかしさまで愛しいくらいです。

そしてビスコンティの演出はドロン=ロッコと同様にレナート・サルバトーリ=シモーネに注がれます。ロッコの無力感の敗北と二重の自滅の敗北。コンプレックスを持った人間は、(必要もないのに)他人と自分を比較して苦しみます。その対象が対等の立場や距離のおける関係であれば、また不完全であれば自らの威厳を『山猫』のように保てますが、相手がこの映画のロッコや『ベニスに死す』のタジオのように「完全な天使」である場合、その劣等感は自らに向けられる刃になります。そして退廃と孤独に堕ちてゆくシモーネ。行き場のない怒りはついに爆発して、最後には天使=ロッコと堕天使=ナディアまでを不幸にしてしまう。家族の誰もがシモーネを愛していたというのに・・

ビスコンティにとっては「ドイツ三部作」以降のように自ら苦しみや偏愛を内面化せずに、社会性や(破綻のないドラマとしての)文学性も充分に取り入れることに成功した作品として満足のいく仕事だったのではないでしょうか?

くろねずみ様、勝手にコメントを引用してすみません。その素晴らしいコメントの説明になってしまいました。

(評価:★4)

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