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[コメント] 夏の嵐(1954/伊)

勇敢と卑怯
ルミちゃん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「出て行け」、こう叫びながら、民衆が敵の将兵に花束を投げつける、冒頭のオペラ劇場のシーン、最初はどう理解していいのか迷ったけど、つまり、勇敢な行為.

ラッパの合図と共に、畑の中から、山の中から、敵味方双方の兵が姿を見せ、激しく撃ち合う.その間の道を馬車で突っ切るのだけど.私、最初観たとき、やはり、どう言うことか理解できなかった.隠れていれば、馬車がねらわれる.だから馬車を擁護するために、姿を見せて撃ち合ったのね.つまり、勇敢な行為. この映画に描かれる戦争、それは勇敢、この事を意味するように描かれている、と言っていいのでは.

軍資金をマーラーに渡して、仲間を裏切るリビア、その金で医者を買収して、偽の証明で除隊するマーラー.リビアとマーラーの関係が表すものは官能、そして、その官能が意味するものは、卑怯と言える.映画全体が、勇敢と卑怯を、対比させるように描かれている.

さて、ラストシーン. 「奥さん、密告は、殺人ですぞ」、つまり、マーラーを密告したリビアの行為は卑怯.卑怯な男を、卑怯な女が、卑怯な方法で復讐した、最後まで卑怯が残る.こう言っていいのかしら.

「おれは金を払って、若い女を抱く.おまえは金を払って、若い男を抱く」このマーラー言葉、一見、正しいことを言ったように受け取ったのだけど、お金で人の心は買えない、リビアの間違いを端的に言い表しているのね.

さて、もう一度勇敢と卑怯.

卑怯とは、お金で買われた心であり、勇敢とは、お金で買うことのできない心.何より大切な心なのね.

(評価:★5)

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