[コメント] オリバー・ツイスト(2005/英=チェコ=仏=伊)
映画を見終った人むけのレビューです。
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情感たっぷりにこの映画を撮るロマン・ポランスキーの視点は、『戦場のピアニスト』同様、ひたすらに翻弄されその中で悪びれず健気に生きるバニー・クラーク演じるオリバー君に常に固定されている。だからといって一応ロマン・ポランスキーなので、おすぎのアホがCMで言うような安易な感動作になるはずはないのだが(そうならないため映画の質を向上させているのは美術とキングズレーとバニーくん。)、あまりにも都合のいいハッピーエンドを迎えて時間を感じさせることない人畜無害な娯楽作になってる感も否めない。金もかかってるみたいだし、子供が主人公だとこんなもんなのかな。
あと気になる点が。この時代、みんな自分が生きていくのがやっとであった。大人もロクデナシやら人でなしばっかだ。そんな中でドジャーを始めとするフェイギンの元で暮らす少年たちはちっちゃな悪事をしているけど、小さい頃からあんな環境で暮らす少年たちがその行為に罪の意識を持つはずはない。孤児院、救護院で育ったオリバーにはそれを見分ける幾ばくかの善良さが備わっていたわけだが、あくまでそれはたまたまの話である。フェイギンの元で暮らす少年たちは確かに悪ガキではあっただろうけど、オリバーへの接し方などからも分かるとおり、育った環境ゆえにああいう暮らし(それなりに楽しそうだけどね)をしているだけで、結構素直でイイヤツらである。そんな彼らがフェイギン亡き後どうやって生きていったのか気になる。フェイギンという管理者がいなくなってしまったがためにあの街の界隈で死ぬ羽目になったのか、それともスリやら盗みやら働きながら腹空かして暮らしていったのか。はたまたどうしようもない悪人になって最期は絞首刑か。彼らの行方を1シーン映すか、せめてブラウンローのじいさんに一言でも口に出させるかしてほしかった。なんかあのまんま出てこなかったら、主人公じゃないからどうでもいいみたいな扱いじゃねぇか。
この時代を生きた人々の物語を描くためのある種の象徴的存在としてオリバーが主人公であるのはいいが、オリバーにばっかり目が向けられていて良い画も背景もあるのだけれど、時代に翻弄されながらも強く生きていく人々がどうにも描かれていないような気がしてならない。危うくオリバーの無垢な目に騙されて★4つけそうになった。
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