[コメント] 大人の見る絵本 生れてはみたけれど(1932/日)
教室の掛け軸は「爆弾三勇士」
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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子供たちの学校における権力抗争のドタバタ劇だけでも無茶苦茶面白く、後半それが大人の階級差を皮肉る論争劇にそのまま反転する展開も絶妙。親会社の不条理に首を吊る子会社の社長という実話は、平成不況の下幾らでもあったのであり、本作の告発は今でもそのまま通用するものだ。
しかしこの作品、更に奥が深い。驚いたことに、当時のファシズムを希求する庶民の心情まで語り始める。お父さんより偉くなってみんなを見返しなさいと云われた突貫小僧は、大人になったら中将になるんだと答える。一足飛びに階級差を飛び越える方法が当時は存在していて、それは親方日ノ丸で拡張し続ける軍隊だったのだ。教室の掛け軸に「爆弾三勇士」とあったのが突然意味を持って現れてくる。馬鹿に明るいラストに考え込まされる。現代ではそんな便利な職業などない。
このテーマは『戸田家の兄妹』で具体化することになるだろう。小狡い親族を一刀両断にする佐分利信が葛城文子を引き取る先は中国大陸なのだった。
汽車(モダニズムの象徴だ)の通過を何遍もフレームに収め続けるのは、子供じみていて偏執狂ぎみで、いわゆる小津らしさの対極にあるショット、実に奇妙な印象が残る。
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