[コメント] Vフォー・ヴェンデッタ(2005/米=独)
いかにも戯画的な演出や台詞回しの裏で、911以降の世界に言うべきことをしっかり言っているのがエライ。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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つまりは「憎しみを克服しろ」と“V”は言う。怨恨や恐怖に因って行動を起こすのではなく、理念に基づいて動けと“V”は諭す。建物を壊すテロリスト“V”が伝えようとしたメッセージは、その行動に相まって実に現代的だ。ものの良し悪しの前提が崩れた世界で“V”が提示する理念は、呆れてしまうほどシンプルな、人間の「愛と誠」──。
この映画に描かれた英国の生活者たちは、被抑圧者でありながらギリギリ我慢できる程度の人生を送っている。現状に満足ではないものの、死なない程度の安寧なら保障されている。そんな人生を送る者にとって、「理念に基づいた現状打破」に蜂起することは、理想ではあっても必須ではない。誰もが不満を抱きながら、リスクさえ背負わなければそこそこ自由に生きていける社会なのだ。
変えたほうがいいけれど、変えなくても別に差し支えない世界。その世界を変えようとするには、途方もなく大きな勇気が必要になる。個々の人間たちが個々に立ち上がることは大変に困難である。
だから“V”は仮面を配った。民衆にひととき「個」を放棄させ、理念の子とすることで革命を促したのだ。
自ら復讐に身を賭しながら、決してその怨嗟に囚われることなく理想の世界を導かんとしながら散っていった“V”。復讐は我が手で、革命は民衆の手で。その姿は、私の目には「勝ったのは百姓たちだ」と言って頭を垂れた、かつてのあの侍たちに重なるのである。
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