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[コメント] RENT レント(2005/米)

連帯の時代だった20世紀中期を越え、ベトナム戦争の傷跡は癒えたものの、個人の幸福のみを追うに至った世紀末に製作されたこのミュージカルは、例えば『ヘアー』なども持つ貧しくもそれを乗り越えるパワーは持ち合わせない。だが本作の中には、瞠目させられる珠玉のことばがある。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「戦争の反対語は平和なんかじゃない。創造だ!」

これを反戦のことばと見れば、ここまでポジティブな名言を他に知らない。平和とは、場合によっては「のへーっ」と後ろ向きにダラケ切った状態をも指すことを、世の俗流平和主義者たちは忘れているか、あるいは意識的に無視している。創造の喜びは戦争の破壊とは無縁のところにあり(もちろん兵器の製作も「創造」だが、それすらも完全な平和の無気力さよりは人間の行動として高潔である)、それを叫ぶマークの「創造万歳!」の叫びには素直に共感できるものがある。

ところで『シーズンズ・オブ・ラブ』には心を動かされるものがあったのだが、他のナンバーにはさほど感心できるものには出逢わなかった。それは趣味の問題として片付けられていいようなものの、作品自体にもさほど感激できなかったのは、これが同性愛やエイズ(当時は死病だった)といったきわめてプライベートな問題を俎上に上げた作品だからなのかもしれない。本人にとっては重大事だが、自分のようにセックスに淡白な人間には別世界の問題である。

あと、この作品ではもっとも見ていて愉しい、仲間のかすがいとなることを辞さなかったエンジェルがあっさり死んでしまい、より「個」のエゴイズムに忠実であったミミが奇跡的に蘇生してしまうあたりも、いかにも御都合主義でいただけなかった。

結局、こうした社会派ミュージカルというジャンルにおいては凡作だが、ただの馬鹿馬鹿しい内容を音楽でデコレートした作品がまかり通るミュージカル業界では、傑作と呼んでいい作品なのかもしれない。ミュージカルというジャンルがそれほど衰退しているということは、残念ながら事実である。

(評価:★3)

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