[コメント] カーズ(2006/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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毎回質の高いCGアニメーションを作ってくれるピクサーの新作。しかも監督は『トイ・ストーリー2』(1999)以来となるラセターとあって、きっと面白いだろう。と言うことで鑑賞。
確かにウェルメイドの作品としての質は高い。オチの付け所が分かっていても、演出の良さでしっかり見せるべき所は見せるし、盛り上げ方も上手い。自己中心的な主人公が、人(車?)の優しさに触れることで人間的感情を呼び起こしていくと言う展開もベタだけどしっかりしてる。
…のだが、全般的にどこか乗り切れない部分を感じさせられたのも事実。私自身に車に思い入れがないのも原因の一つだろうが、何となくこれを観ていると、オリジナリティの無さというか、妙なデ・ジャヴュを感じてしまう。
少し考えてみると、気付く所があった。
この物語の展開って、ひょっとして西部劇そのものなのでは?
例えばそれはイーストウッド主演の『アウトロー』(1976)であったり、ジョン=ウェインの『チザム』(1970)や『リオ・ロボ』(1970)であったり…そうか。主人公をマックィーンじゃなくて、“ラジエーター・スプリング”のドックに持ってくるなら、そのままこの時代の西部劇になる訳だな…ところでこの時代の西部劇って、実は一番の低迷期にあって回顧趣味全開の話ばかり。そう言う時代の作品を真似したから、話がこんなになってしまうのか。
ラセターはインタビューでこの作品を「大人も子供も楽しめる」と言っていたが、その対象とする“大人”ってのは、70年代の事をよく知っているアメリカ人に限ってのことではなかったのだろうか?『トイ・ストーリー』(1995)ではそれこそ全世界的な発信が出来ていたのに、ここでは対象を絞りすぎたのでは無かろうかねえ。
昔、具体的には1950年代のアメリカは良かった。これが全編を通じて語られ続けるので、それが居心地の悪さになってしまった訳だ。何も考えずに消費文化を謳歌していた時代だった訳だし、本作ではそれを隠そうともしてない。田舎町の望みってのが、要するにネオンギラギラにして客に来て欲しい。ってのだからねえ。
それが今の日本に住む私にとって、居心地の悪さにつながったのかも知れないな。
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