[コメント] フラガール(2006/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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常磐ハワイアンセンターといえば、同じ郷里出身の私にはかなり馴染み深いのだが(実際は一度も行ったことはないけど(笑)、子供の頃は散々TVのCMで観たものだからねえ。「日本のハワイ」っていうキャッチフレーズとラストのフラダンスのタンタンタンツタンタンタタンタン…と言う音楽は毎日のように聴こえたもの)、その内実がこんなに切実なものだったとはまるで知らなかった。我が故郷にある施設の理解が深まったと言うことでも勉強になった。方言も結構耳馴染みが良い(同じ福島でも地域が違うので分からない部分も多々あるが)。
物語そのものは事実を元にしているとは言え、なるだけプラスの部分だけを抽出した結果、ウェルメイドのサクセスストーリーとして仕上げられているのが特徴。目新しさはさほど無いにせよ、その分安心して物語に浸っていられるし、何より演出が良く、フラダンスに対する批判的な目線に耐えての練習、やむにやまれぬ涙の別れなどを経て、最後のハワイアンセンター設立に向かっての疾走感、フラダンスシーンのカタルシスなど手堅くまとめられていて、大変心地よし。重い部分も多々あるが、悲惨になりすぎないようにうまくコントロールできてるのがバランスの良さだろう。
2006年は観客動員数が久々に邦画が洋画を超えるなど、邦画には朗報が多かったが、本作が日本アカデミー賞を受賞したことも2006年における邦画界のトピックとなった。日本アカデミー賞はその名の通り、アメリカのアカデミー賞に準じるものとして日本で作られた賞だが、日本映画界の層の薄さを如実に示すものとしても知られる。かつて日本には5つの大製作会社があり、悪名高い五社協定などと言う弊害を生んできたが、時代が変わっても大会社中心体制はあまり変わってない。今も尚、東宝、東映、松竹のほぼ三社で日本アカデミーは独占されていた。
対して本作はシネカノンという、いわば中小製作会社による製作で、上映館数も少なく、ほぼミニシアターのみで上映された作品であった。それが日本アカデミーの作品賞を取ったと言うことは、一種の快挙であり、日本の映画界も良い意味で変わってきていることを思わせてくれた。
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