[コメント] 太陽(2005/露=伊=仏=スイス)
キリスト教世界の制作陣が「現人神がある日突然人間に為る」というエキゾチシズムに対して興味津々なのはよく伝わってきた。が、それ以上のものがあったのかは疑問。
途中から物真似なんだかオリジナルなんだか境界が分からなくなってくるイッセー尾形のエキセントリックな演技は実に面白いのだが、2時間ずっと一人芝居というのはさすがにキツイものがある。孤独感の描出という狙いがある以上仕方ないとは思うが、最後に桃井かおりの皇后と絡むシーンが出てきて、観ているこちらも何だかホッとしたというのは正直なところ。
白眉なのは、異形世界へと成り果てた終戦直後の東京の造形描写。「焼け野原」というより「瓦礫の山」となっているのはこれもヨーロッパ的感覚ではあるだろうが、どこぞの亜熱帯だよと思わされる皇居?の様子との対比もあって、そのおどろおどろしさは見応えがある。空襲で投下される爆弾が海洋生物と重なっていく悪夢のイメージも秀逸。
序盤でやたらと大正13年、大正13年と繰り返されるからなんのこっちゃねんと思っていたら、米国での日本人移民排斥の事だと云う。それを太平洋戦争と結びつける発想は今の日本人にはすぐには出てこないので、ハッとさせられるものがあった。
<追記> コメントを上げてから気づきましたが、今日は昭和天皇生誕の日「昭和の日」でしたね。まったく意識してませんでしたが…。昭和天皇もだんだんと「歴史」になっていきます。
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