[コメント] X―MEN ファイナル ディシジョン(2006/米=英)
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マグニートーは成功していれば英雄の名を欲しいままにしていた人物だろう。彼は地球の平和のためでも、私利私欲のためでもない、他ならぬミュータントたちの未来のために戦い、あるいは勝利を手にしていたかもしれなかった。彼はかつての同志としてプロフェッサーXにも敬意を払い、彼同様に同朋の未来に尽くしてきた。決してレックス・ルーサーやダース・ヴェイダーのような単純な悪党ではない。ただ、そのやり方が過激であるだけだ。こんなアンチヒーローがアメコミ映画に登場したことに、大いに隔世の感を抱く。人間になってしまったミスティークを眺める冷酷な目も、彼を差別しつづけた人間という種族への並々ならぬ憎悪を感じさせる。
それに対し、穏健派であるプロフェッサーX側はつまらぬ内ゲバを繰り返しているように自分には見えてならない。彼らミュータント同士の戦いは人間に操作された悲惨な代理戦争だ(大統領は我が子がミュータントであることを知ったのちでも、彼らを人間に「戻せば」一件落着としか考えなかったのだ)。ところで、指導者を除けば若者ばかりの抗争であるあたりは、学園闘争華やかなりし頃を彷彿とさせる。サイクロップスやジーンの死はただの学生の死であり、顧みる者も僅かだ。そして、いずれ市民権を得るミュータントにとっても、やがて忘れ去られる小さな事件に過ぎない。
だが、このささやかな闘争の映画は、アメコミ映画化作品のなかでその中の歴史を語りえた先駆者的な作品とみていいように思われる。人間になってしまい、かつての朋友にして敵であった男の喪失を悲しみつつひとりでチェスを続けるマグニートーの姿には、この物語のなかでもっとも辛い生を続けねばならない「人間」の悲哀があった。
(付記)スタッフロール後のラストカットは悪い冗談と思いたい。
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