[コメント] 手紙(2006/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
最近の悪い癖で、ダメ出しをしながらこの映画を観ていた。
ラスト3分以外は、本当に出来が悪いと思う。
掃いて捨てるほどある泣かせ映画の王道を行くステロタイプな演出。
どの役者も決して下手ではなく、
テレビドラマぐらいには耐えられる無難な演技で物語が進む。
退屈でないのは原作の良さである。
というか、かろうじて原作の良さを残しており、もったいないことに、
この小説の生命線とも言える、手紙が往復する様子そのものを、
映画的な工夫無しに淡々と描いているのにはがっかりした。
しかし、あのラスト3分間の、魂を揺さぶられるようなシーンはどうだろう。
あれこそ映画だと思う。
今日もまた1本、時間潰しに映画を消費したかとため息をつく寸前に、
思いがけず怒涛の感動がやってきて、気が付くと僕は嗚咽していた。
最も尊い兄弟の絆。
日に日に細く途切れそうになる1本の糸が、再びつながったその奇跡の瞬間を、
あんな風に描くなんて、僕は想像もしなかった。
幕が開き、弟山田孝之は兄を探す。
この視線劇の見事さ。
徐々に漫才が心地よく馴染みだして、転がり始める。
ギャラリー全体に笑顔の花が咲き乱れる。
兄はどこに?
兄は笑ってくれているか?
服役囚たちの笑顔、笑顔、笑顔。
その笑顔満開の中にたったひとつ異質なものを見つける。
泣きじゃくっている兄。
玉山鉄二が鼻水を垂らしながら泣きじゃくり、拝む姿は、
「般若心経」という言葉と共鳴し、人間には神様が必要なんだと思い知らされる。
彼は紛れもなく神に感謝し、拝んでいた。
このシーンに横たわる深いギャップがものすごい。
笑いと涙。
癒しと祈り。
希望と絶望。
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