[コメント] アマデウス(1984/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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しかもこの映画のタイトルは『アマデウス(神の愛する者)』で、聞き手は神父さん。「神は平等で、誰をも愛します。」という教義をしんじてるかどうかは知らないけど、それを広める立場にある神父さんに聞かせるとは。意地が悪いよ、この映画。
キリスト教の神様は思いっきりえこひいきをするなんてのは誰でも知ってる。でも、キリスト教の昔の研究者たちはそこんとこの矛盾は結果論でうやむやにしてきた。「カイン君はアベル君を殺しちゃったから悪いんです。」ってなふうに。原因については全然考えでこなかった。「神様は何でもできるし、何でもするんです。しかもその判断基準はいつも正しいんです。なぜなら出来損ないの人間どもに神様の知恵は理解できっこないからです」、「神様のすることはいつも不可解だけど、いつも神様を信じていれば、奇跡は起こります」あほいうな。できるかそんなこと。
サリエリ君自身にあそこまで追いつめられちゃうような理由はあったのか?のちのち信仰は捨てても、それまでは割と熱心な信者だったみたいじゃないか。それなのにモーツァルトはとても信心深いとは言えそうにないのに、死後神格化されて、サリエリ君は精神病院行き。ここんとこの明らかな矛盾をそこらのジャーナリストじゃなくって、神父さんにわざわざ聞かせる。「神の平等」でもって「救済」を与える神父さんに。恐ろしい対話、それでもって神父さんの完全な敗北。神はいるかもしれないけど、平等じゃない。公平ではあり得ない。よって完全ではない。キリスト教的神なんて存在しない。だから救済だってあり得ない。自分の存在意義さえ否定される神父さん。みじめであわれ。
これは単なる映画じゃない。大学の講義を聴くよりも、もっと奥深くて意地の悪い哲学書だ。ニーチェくらいに出てたら発禁本になるよ、これ。
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