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[コメント] さくらん(2007/日)

はなっから椎名林檎が目的で見に行きました。結果は……どっかのテーマパークの長い長いCMとしてなら★5、映画としては★2。椎名林檎のPVとしても★3どまり。
空イグアナ

原作は雑誌連載だそうだが、もう少しうまくまとめられなかったものか。映画館で一度も眠らなかったはずなのに、話が全然頭に残ってない。映画も原作も知らない人から「どんなストーリーだった?」と聞かれたら返答に困る。それくらい何も残っていない。

「ストーリーよりも映像を楽しむ映画」「フィーリングで楽しむ映画」というふうにも思えなかった。「映像美」というものを感じられなかったからだ。画面はカラフルなセットや衣装で飾られて、確かにきれいなんだがカメラという、肝心の道具が活かされていないように思う。美しいセットと衣装を、カメラの前に置いただけ。そしてカメラは適当に回しているだけ、という感じがする。

旅行では、筆舌に尽くしがたい絶景に出会うことがある。それはテレビや写真で見るのとは全然違う。視界一杯に風景が広がり、風を肌で感じ、臭いを感じる。じゃあテレビは、写真は、実際の体験に劣っているのか?答えはノーだ。小さな枠に収められた写真やビデオの映像の方が、ずっときれいだったりする。テレビや雑誌の宣伝の方がずっと立派で、実際に見てみるとショボかったということだってある。それが優れたカメラマンの仕事である。カメラという道具を知り尽くして初めてなせる技だ。もちろん映画になれば、移動撮影、編集、音楽など、技巧を凝らす部分も広がるだろう。(なるほど。この映画、パンフレットの写真を見ると素敵だ。)

これが映画でなくて、日光江戸村みたいな観光地のCMだったら、大成功だよ。どれだけきれいに「撮影」できているかはともかく、観客席でずっと「この撮影セットのど真ん中に立ちてえ。」という欲求が膨らんでたのだから。物語に登場する町に立ちたいのではありません。撮影セットに囲まれて立ちたいのです。映画は、スクリーンの向こう側にあるものを楽しむのが目的ですが、これはよくないのではありますまいか。そこにある「世界」を楽しませてください。「撮影セット」ばかりを楽しもうとは思いません。

さて、一番の目的だった椎名林檎の音楽だが、これは映像に似合っていてよい。というよりもともと時代劇ロックともいえる曲を作ってきた人だから、合うのは当然である。今回、その実力をいかんなく発揮してくれた、と言いたいところなのだが、CDで聴いた曲がたくさんかかってきたのが気になった。アレンジこそされているが、聞き慣れた曲がかかってきて、イントロクイズでもやっている気分になった。既成の曲を使うことは映画ではときどきあることだが、「椎名林檎の曲が映画のBGMに!」ではなく「椎名林檎が映画の音楽監督に!」というところに興味をひかれたのだ。彼女の新境地というものを感じられなかったのが残念だ。

東京事変を結成する以前のPV集「性的ヒーリング・其の参」に、「茎」という曲が収録されている。「百色眼鏡」というショートムービーをもとに作られていて、台詞まで入っているのだが、これを見ただけでは「百色眼鏡」がどんなストーリーなのかは、はっきりとはわからない。でも5分間退屈しない。(実はこのレビューを書いている現在、「百色眼鏡」を見ていない。)5分間と120分間という時間の大幅な違いを考慮しても、『さくらん』はPVとして楽しめなかった。

僕としては、この映画を見るくらいなら、椎名林檎のPV集を120分間見ていた方が楽しめる。

……『CASSHERN』のときと同じようなこと書いてるな。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)林田乃丞[*] ぽんしゅう[*]

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