[コメント] 秒速5センチメートル(2007/日)
もはや偉大なるマンネリ。「映画に物語は必要か?」という物凄い命題を突きつけられた思いだ。
もうこの人はこれでいいんじゃないかと思う。前作『雲のむこう、約束の場所』ではまだストーリーテラーとしての迷いがあったのかバランス感覚を欠いていた気がするけど、この作品で新海は境地に達した感がある。もはやドリフのコントやダチョウ倶楽部の熱湯芸、あるいは江頭2:50などと比肩しうる、ある種完全に開き直って突き抜けてしまった伝統芸能の趣さえ感じられた。
あらゆる「そんなわけあるかい!」を跳ね飛ばすだけのパワーが、この映画にはあった。それは単に画が美しいとかいう技術の問題ではなく、白紙に描かれた情景そのものが、ただそれだけで映画というメディアの主軸となり得るのかという、「キャラクター原論?シナリオ構造?なにそれ、美味しいの?」という、神をも恐れぬ創作行為として観客である私を圧倒したということだ。
それは、例えば10年、あるいは20年たったときに「あの時代のアニメ」としてふと思い出されるのは原恵一や細田守ではなく新海誠なんじゃないかってことだ。私たちがいまだに「あの『AKIRA』みたいな○○」としばしば口にするように(するよね?)、ごく自然に「新海誠の風景みたいな○○」って言ってそうな気がするのだ。おそらくは相当な人たちに眉をしかめられるだろうが、そんな気がするのだから仕方がない。新海はトップランナーではないかもしれないが、この時代を生きるひとりのアニメーション・モンスターであることは疑いようがない。
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