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[コメント] バベル(2006/仏=米=メキシコ)

非常に曖昧な事象によってリンクする物語群にまっすぐ貫かれているもの。
TM

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







一発の銃弾、一枚の写真、非常に曖昧な事象によってリンクし、場所を移しながらねじ曲がり交錯する物語の中で、唯一ぶれないで存在する軸は、差別。

無意味、無自覚のうちに行われた行為が他者にとってどのような意味を持つのか?理由も聞かずに足蹴にされ、銃口を向けられ、罵倒され、あるものは虫のように殺される。重症の妻を介抱してくれたガイドに現金を差し出す夫は、悲しい表情でそれを受け取らないガイドに困惑する。移民の家政婦に息子の結婚式に出るなと命令するその男はテレビに映れば妻を愛する立派な夫だ。遠く離れた日本では価値も多様化して一見、その様な関係性は消滅しているように思える。しかし、ひとりの聾唖者の眼を通してみれば、それはごく表面的なことにすぎない。向ける眼、差し出す手のすべてが無自覚、意味なんてない。しかしそれを向けられたものにとっての意味は?

この優れた作品はさりげなく、しかしまっすぐに我々に突きつけられた問い、そのものなのだ。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)chokobo[*] ぽんしゅう[*] けにろん[*]

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