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[コメント] 河童のクゥと夏休み(2007/日)

良作。やっぱり親としては、子供たちには『ポケモン』よりはこっちを観せたいと思う。
4分33秒

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







…以下、全然まとまりませんが、思いついたことをパラパラと。

子供向けにしては、クゥの父親の死や、犬のオッサンの死はかなりショッキングだが、死の描写を敢えて避けないというのも、大人への階段を上り始めている子供たちへのメッセージの一環であると認識した。クゥが東京タワーの上で一瞬自殺を思うのも、子供達に「自ら死を選ぶ」ということを疑似体験させ、そこから逆に「死への恐怖」の意識を芽生えさせるための重要な演出ではないかと思った。(原作未読ですが)

いじめや家庭不和の問題にも全編を通じて触れ、最後にはそれらを絵空事でない、小学生達の日常に即した、かなり現実的な形で解決させているのも、見ていて印象に残った。いじめを受けている菊池さんは、いじめる側にけっして反抗することなく耐え続け、結局は両親の離婚による引越しで「うやむやにする」形で、いじめは結果的に解決される。しかし、最後の最後でいじめる側に立ち向かう勇気を得て、彼女の精神は一歩前進する。同時に康一も、いじめられる側に回ってしまったことで菊池さんの心情をようやく理解し、わずかに残っていた偏見を捨て、彼女に真心で接することができるようになるのである。…確かに捻りは無いが、それがかえって素直で良い脚本だと思わせる。

そうした成長を遂げた菊池さんが、両親の離婚の原因を作った父親(あるいは母親にできた新しい男)の革靴を、マンションの外にぽいっと捨ててしまうシーンは、彼女が精神的に「次のステップ」に移行したことを表しており、私は思わず心の中で快哉を叫んでしまった。このシーンは、少年時代に実際に両親の離婚を経験している私には、実に印象的だった。(私自身も、ある日学校から帰ってきて玄関に入ると、外に女を作って滅多に帰ってこない父の靴が置かれていた…、ということを小学生時代に経験している。…そういうときの憎悪、恐怖、焦燥は、今でも忘れない。)

それらに絡めて「恋」の問題も扱い、これもまた実に後味のいい解決を見せているのも清々しかった。(駅で最後まで見送ってくれる彼女の、何という愛しさよ!!!…そして、見送り終わった後、彼女がうつむきつつ帰途に着く後ろ姿に、精一杯の無言のエールを送ってしまう自分。)

…というわけで、菊池さんにばっかり目がいっちゃった私でした。(…ま、私は●●な人なので当然の帰結かも知れませんが。)

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…ところで、本作のヒロインの名前は「菊池沙代子」。(まぁ康一の妹であるヒトミちゃんもヒロインといえばヒロインですが!)…どこかで見たことある名前だなぁ…、記憶では確かカタカナで「キクチサヨコ」だったよなぁ…と思い、ネットで検索したら、ありました!つげ義春の『紅い花』のヒロインの名前じゃないか!(懐かしい…。20年前に読んだ漫画の登場人物をよく覚えていたな…。)歳の頃も同じだと思うし、なんか関係あるんでしょうか…。

また、劇場公開映画にしては、ちょっと絵が荒れ気味だったことは否めないだろう。キャラクターの顔がシーン毎に結構コロコロ変わっていなかっただろうか。最近のアニメ映画で、ここまで「絵にこだわっていない作品」というのも久しぶりに見た気がする。

なお…、それを言っちゃあお終いよ、的なことを敢えて言うが、本作は、主人公達と同年代の子供を持つ親と、そうでない人では、やはり印象や評価がかなり変わってくると思う。

(評価:★5)

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