[コメント] スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ(2007/日)
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スキヤキといえばそう、海原雄山。以下『美味しんぼ』第5巻「牛なべの味」より抜粋。
「この鈍重な味はどうだ。問題はこの割りしただ。醤油と少量のまずい酒と水と大量の化学調味料と砂糖がぶちこんである。最低だ。しかも煮えすぎた肉をとき卵に絡めて食べる。これではどんな良い肉を使っても肉の風味は失せてしまう。おまけに火を通しすぎているから肉の持ち味が消し飛んでいる。スキヤキこそ牛肉を最もまずく食べる方法であろう」
上記、雄山のスキヤキ評をこの映画に当てはめると実に説得力がある。展開は鈍重だし、多すぎる火薬で銃撃戦の緊迫感は失せているし、武士(もののふ)道とヲタ調味料の食い合わせも悪く、キャラクタが多すぎるので復讐劇の持ち味が消し飛んでいる。どんな良いキャメラマンを使っても云々である。
だが、私ら庶民が子供のころから美味い美味いとありがたがってきたのは、このスキヤキではなかったか。薄っぺらい牛肉をアホみたいな濃い味でぐつぐつ煮込んだスキヤキが大好物ではなかったか。単純な話、西部劇を見たらピストルをくるくる回しながら英語をしゃべりたくならなかっただろうか。私はなった。今でもなる。そうした「西部劇ごっこ」の延長線上をプロの作家が映画で走っていたことに、私は大きな喜びを感じる。
例えば『メジャーリーグ2』を想起させインチキ外国語映画であることを高らかに宣言するために登場した石橋貴明というキャストが、その最期においてホモオダホモオに転化したとき、この映画は私のものになった。塩見三省ってインディアンみたいな顔してるよねという映画の問いかけに、私は首が折れるほど首肯したくなった。
徹頭徹尾娯楽であることにこだわり、明快なコンセプトと過剰なサービス精神を抱いたこの映画が私は大好きだ。三池のこうした創作スタンスは間違いなく彼のオリジナリティだと思うし、これからも日本映画界のスペシャルピースとして、たまにでいいので、こんな楽しい企画映画をつくり続けてほしいと思う。
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