万遍なく下回っているが故、オリジナルで気に入った箇所は特に見劣りが目立って感じられる。例えばコメディ部門。”金魚のフン”や、奥方を苦手にする三十郎、押し入れ侍の絡み方なんかはまったく物足りない。逆に、ラストの三十郎と半兵衛の決闘シーンはオリジナルのそれも大してよいと思わなかったので、リメイク版の演出が凡庸でもそんなに気にならない。

織田裕二は想像していたよりずっとよかったが、発声とか三船を意識し過ぎでちょっと滑稽。「ギラギラした抜き身みたい」ってのは全く説得力無し。

脚本だけでなく空間造形もオリジナルそのまんまだが、セット・美術装丁はちゃんと作られていて悪くない。椿屋敷の庭園セットはオリジナルでもショボかったが、せっかくなんだからそこくらい豪勢に作ればよかったのに。