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[コメント] ラスト、コーション(2007/米=中国=台湾=香港)

どうにも刺激つまり驚き即ち面白さを欠いたフィルム。観客の「見る」自由をとことん奪うことを第一に設計された保守的な画面はちょっと許容しがたい。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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極めて被写界深度の浅い画面ととても美しいとは云えないクロースアップの多用が「見るべきもの」とやらを指定し、さらにカメラワークとラック・フォーカス(同一ショット内で、ピントの合っている部分を変えること)の駆使によって、私たちの「見る」自由は徹底的になきものとされる。それはむろん技術力なしでは成しえぬことであるが、このような観客を舐めた映画を私は好きになれない。

また、冒頭タン・ウェイが電話でワン・リーホンらにトニー・レオン暗殺のゴーサインを出すところで物語は四年前に移行するが、ここで少なくとも暗殺直前までこぎつけることは確定したのだから、「四年前」から始まる物語においては展開そのものよりも「暗殺直前」に至るまでを「どう描くか」(=演出)がもっぱら焦点となるはずだ。が、いかんせんその演出がよくない。

たとえば、決定的に不満なのは「四年前の物語」がまったく「青春映画」として成立していないことだ。だから本来ならばウェイを中心としてレオンと対称的かつ対照的位置を占めるべきリーホンがどうでもよいキャラクタに成り下がり、終盤でウェイが抗日派を裏切ることや処刑場で一列に並ばされるショットが何の衝撃も感動も感慨も生み出さない。あるいはそれらは脚本の時点での問題かとも思われるが、それをどうにかして克服するのが演出家の仕事ではなかったか。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)ナム太郎[*] ハム[*] ぽんしゅう[*] けにろん[*]

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