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[コメント] 隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS(2008/日)

マツジュンってなかなか武骨な面構えしててカッコいいですな。
林田乃丞

 例によってロマンスの段になるとテンションが下がるなぁ。これ、明確に樋口監督の弱点と思う。心の機微を画面だけで押し切ろうとしてしまうというか、気持ちの動きに情念が入っていないというか、「君を好きになった」という瞬間に説得力を持たせられない。

 重ねて不幸だったのは、リメイクでプロットに改変を加えた部分というのがモロにその樋口の弱点たるロマンスの部分だったこと。理想としては原作の持ち味と新たに加わったロマンスとが高次元で融合した!みたいなところを狙っていたのだと思うし、それはそれで面白い試みだと思うのだけれど、結果的に樋口のロマンスでは原作に切り込めなかったなぁという印象で、自慢の画面力も心なしか元気がなかった気がしました。

 あと、中島かずきの脚本にも注目していたのだけれど、こちらも可も不可もなくまとめたなぁという感じでやや残念だった。樋口も中島かずきもある意味でとんがった作家だと思うし、もしかしたら無茶苦茶なリメイクを繰り広げるんじゃないかという、「★1か★5か」みたいな、それこそ天元突破した映画を期待していたのだけれど、幕が開いてみれば「★3か★4か」、原作に飲まれたまま終わった感じでした。

 とはいえ、「黒澤リメイク」という映画のジャンルはまだ始まったばかり。私の観た劇場ではこの映画の前に劇団☆新感線の「メタルマクベス」の告知が入っていたのだけれど、今後シェイクスピア作品みたいに色々な作家がそれぞれの得手を生かした黒澤リメイクに挑む時代がきたら楽しいだろうなぁと思いました。それは黒澤作品の価値を貶めるものでは決してないし、再解釈が繰り返されてこそ、古典は古典としての輝きを放ち続けてゆくのだと思うです。

(評価:★3)

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