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[コメント] 告発のとき(2007/米)

戦地に慣れるということがどういうことなのか、写真と映像、そして事件がそれを示す。『ノーカントリー』に続き、自己の価値観を破壊される役を演じたトミー・リー・ジョーンズがとても良い。
Master

**ネタバレ注意**
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息子が殺された事件を追ううちに、イラクで彼に何があったということに加え、彼がイラクで何をしたかと言うことまで調査せざるを得なくなる様が恐ろしい。その調査で出てくる事実は、麻薬に手を出すのみならず、焼死体に火をキャラクター化したステッカーを貼り付けたり、医療兵を装って負傷兵の傷口をいじるような真似を息子がしているいうものなのである。携帯に残された映像・写真は人間性を喪失していった様をまざまざと示す。これは「パンドラの箱」の様に最後に希望が残るような甘っちょろい話ではない。それが証拠に、最後にマイクの殺害を自供した兵士は、時折笑顔まで見せながら「違う日だったら彼が私を殺した」とまで言い放っているのである。

殺されても仕方ないわけではない。しかし、戦地に行った彼らがどういう状況にあるかは理解できる。自分の息子の変わりようをまざまざと見せ付けられた事による板ばさみがハンク(トミー・リー・ジョーンズ)を苦しめる。ポール・ハギス監督はハンクを通して「自由が増えればアメリカが安全になる」という思想に対し、対外的にはどうあれ、対内的にはそれが幻想であることを提示した。正しい戦争なぞあるわけがないのだ。彼の強い信念を感じずにはいられなかった。

(2008.07.13 TOHOシネマズ川崎)

(評価:★4)

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