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[コメント] ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!(2007/英=仏)

安心して楽しみ、安心して気持ち良くなることのできる映画だった。作り手の用意したステージを間違えずにしっかり乗れば、そのままあちこちへ連れ回してくれ、最後には息のつけるゴールへと導いてくれる。こういう映画のことを“良作”っていうんだと思う。
Myurakz

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 一見非常に目新しくも思える今作だけど、構成要素をバラしていくと実は新しいものなんて一つもないことに気が付く。警官ものであることは言うに及ばず、村社会の有り様、倫理集団に見られる狂気、急にスタイリッシュになった時のカット割り、もっと言えば後半バカアクション映画に転じてしまうというその驚かせ方さえ、僕らは過去に何度か目にしてきた。にも関わらず何か新しいものを観ている気にさせる理由、それこそが組み合わせの妙であり、丁寧な作りであり、何より若き監督が楽しげに作っているというその勢いなんだろう。

 ちゃんと映画を好きな監督が、メガホンを握れるその嬉しさをモチベーションにして自分の撮りたかったあれやこれやを詰め込み、ちゃんと頭を使って一本の物語に仕立て上げる。そんな印象を受ける映画だと思う。

 ただそれだけに一点惜しいなと思ったシーンがあった。正体を現した署長を前に、署の他のメンバーを説き伏せるところがそれだ。「みんなおかしいと思わないか!?」「そう言えばそうかも」ってやつ。作り手的には「あそこではもうバカ映画化しているからこの方が面白い」という判断だったんだろうと思うんだが、そこに至るまでにあれだけ頑なな署員たちを見せられてきたせいで、どうも展開のゴリ押しに見えてしまう。映画の肝になる急展開のパートだっただけに、小さな躓きも排してほしかった。もうちょっとスムーズなやり方もあったと思う。

 逆に一番好きだったのは「連続殺人の本当の理由」。真実はより単純だというあのバカバカしい告白で、犯人たちの狂気性が一段階上がり、同時に物語のリアルさが一段深まったように感じてしまった。だって「笑い方が不快だ」とかの方が理由として心に響くもの。ハッキリ言っちゃえばただのちゃぶ台返しなんだが、それを物語の味付けとしてしっかり機能させてくれるのが大変に気持ち良かった。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)甘崎庵[*] kiona 3819695[*] わっこ[*] ペペロンチーノ[*]

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