[コメント] ハプニング(2008/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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街を歩いていた人々が次々パタッパタッと倒れていくという不意に訪れる死の連鎖。予告編では釘付けになるくらい魅力的に見えたのだが、ニューヨークとフィラデルフィアと公園でのシーンを2回繰り返したりされるとちょっと飽きる。工事現場から落下したりとか、首吊りツリーとか、そういうふうなもっといろいろな死に様のバリエーションを増やして欲しかったところ。
また、集団避難をしようとする際のパニック描写がいけてなかった。何が起こったのかわからないままとにかく逃げ出そうとする群衆の不安な空気感などは、もっと画面で情景を描き込んで欲しいのだが、やたらと主人公たちのアップばかりでのれない(エキストラたくさん使っているのにね)。テンポや場面のつなぎもよくない。スピルバーグならもっと上手いんだろうなとか思わず考えてしまった。
主人公たちが一晩泊めてもらう家の婆さんがおかしくなるシーンなんかのように、主人公ほか数名だけをカメラが近くから追っているような場面にくると相変わらずうまいんだけど、本作のように集団などを引いた視点から映すシーンが多くて、その引いた視点で映す場面になるとあんまりうまくいってないって感じかなあ。芝刈り機で自ら刈られちゃうシーンなんて、もうそうなる結果がわかっているのになんでだらだら続くんだろう?
また、監督は、恐怖というものを「どう描写するか」についてはとことん考えているし、考えることが好きなのだろうという気はするのだが、恐怖というものの「本質」にはあまり興味がないのではないか思う。本作の恐怖の対象は、不可知なものから、やがて感染により人間を発狂させるものと正体が分かっていく。その際、恐怖は、不可知であるというそのこと自体から、いつ自分や家族や仲間が発狂してしまうのかという、「喪失」による恐怖へとシフトしていくはずだろう。なのに「不可知なものに対する恐怖」から全然変わっていかない。恐怖そのものにこだわりのある人なら、こういうところの区別にもこだわるはずである。
結局シャマラン監督は「自分が自分でなくなっていく」恐怖よりも、野原に吹く「風」が怖いという感性の持ち主なのだと思う。そっちに針が振れる人なのだ。監督の神秘的なものに対する畏敬の念がそうさせるのかなあ。監督の「怖がり方」にシンクロしないと、後半はかなりつまらないと思う。あれ、シャマラン監督っていつもこういうパターンだな。
何か起こりそうな「予兆」の描写が際立って上手く、何だかんだ文句を言ってもやはり 「見たい」と思わせる監督なのだ。偉そうで申し訳ありませんが、監督、もっと得意技以外の技術を磨いて欲しいです。あと、自分だけでなく他人がどう見るかっていうことももう少し考えて欲しいです。
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