冒頭の２足の対照的な靴のアップ、置き忘れたライターの様々な行方、テニス試合の会場、眼鏡に写る歪んだ像、犯人に精神的揺さぶりをかける眼鏡をかけた恋人の妹の姿等。粘着質な男の執念が、最後には男女の愛憎並ではないかと錯覚するほどに強度を増し、大暴走のラストシーンへと有無を言わせずなだれ込む。超一流どころの俳優が出演してないのが、かえって映画自体の興味に集中させられたのも一因かもしれないけど、ヒッチコックの才気が冴えわたっている一本だと。