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[コメント] トロピック・サンダー 史上最低の作戦(2008/米=独)

これは映画撮影なのか現実の戦闘なのか、という勘違いだけではドタバタ・コメディになってしまうが、この作品はより洗練された笑いを目指している。
shiono

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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オープニングの撮影風景はまさに映画作りの現場という画なのだが、ここから撮影クルーを消し監督を消し(強烈なブラックジョーク)、役者だけにしてしまう段取りがうまい。ここからは広義のワンシチュエーション・コメディとなるのだが、いい脚本に乗った役者たちの元気な姿はまったく飽きさせない。

まず早い段階でチームを二つに割る。一人マジに勘違いを続けるスティラーを切り離し、これが撮影などではなく現実のサバイバルなのだ、と残りの面子が結論するのだが、役柄を捨てて素の俳優となっても行軍の形態が変わらないのが笑える。妙にリアリスティックな奇人ぶりを発揮するロバート・ダウニーJrが殊によい。

パロディや一発ギャクを挟み、捕らえられたスティラーが現実を悟ると、こちらにもまた別の役者根性が出てくる。「シンプル・ジャック」の舞台版脚色を無理やりさせられるくだりは爆笑もの。ここから救出作戦までは怒涛のアクション・コメディだ。

下ネタ、グロ、ゲイ、人種に障害者と、ことごとくタブーを犯すその匙加減も嫌悪感には至っていない。映画ネタ、業界ネタに加え、そうしたものもひっくるめた笑いの数々が役者発信となっているのが一番の魅力だ。スティラー監督は、演じる者の誇りと喜びをコミカルに描いて見せた。それはニック・ノルティとダニー・マクブライドのコンビもそうだし、なにより自分を楽しんでいるトム・クルーズが決定打だろう。

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ロバート・ダウニーJrの黒人メイクについて

19世紀末から20世紀初頭にかけて、アメリカのボードビル劇場では、靴墨や機械油で顔を黒くした白人俳優が、ミンストレルショーと呼ばれる出し物を行っていた。これは歌や踊りなどの黒人芸能を侮蔑的に見せる喜劇であった。南北戦争以降、黒人によるミンストレル劇団が白人のそれと人気を争うことになる。この白人俳優による黒人扮装という慣習は初期の映画界にも引き継がれた。(imdbのFAQより)

(評価:★4)

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