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[コメント] コレクター(1965/英=米)

愛したい、愛されたい、ただそれだけなのに。誰もが多かれ少なかれ抱く征服欲、そんな燻った感情をウィリアム・ワイラー監督は最大公約数の共感を持って描く。テレンス・スタンプがそれに応え、終始思いつめた表情の中に、芯を持った異常者を好演している。
モモ★ラッチ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







サイコパスを主人公にした映画でこれほど主人公に憂いを感じ、感情移入できる映画も珍しく、共犯者意識さえも感じてしまった。昨今の映画では記号に過ぎない異常者をこれほど愛着を込めて格調高く描けた時代があったのか。

男は女を蝶のようにいたわり、自由以外の望むことをすべて許す。

「SEXが目的なのね」と女に言われて憤慨するその姿、抱きしめることさえも躊躇するその姿は一見、歪んだ純愛の形のようでもある。

しかしウィリアム・ワイラー監督はそんな男に感情移入させたままでは終わらせない。

女と約束した最後の日、男は女と口論し、初めて感情らしきものを表に表す。そして肉体関係を迫ってきた女を一方的に売女だと罵る。自分の価値観に沿わないものを否定した男は、同時にコミュニケーションの可能性を否定し、再び自分の殻に閉じこもってしまう。そこでようやくわれわれ観客は彼を突き放すことが出来る。

女死なせてしまった男がラスト、新たな女性を物色するその姿は、より良い獲物を物色するキャリアアップしたベテランコレクターのようであった。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)山本美容室[*] かっきー[*] セント ぱーこ[*]

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