[コメント] 処刑の部屋(1956/日)
政治家としての石原慎太郎にはある程度シンパシーを感じる私でも、作家としての彼には首を傾げざるを得ない。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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政治家としてはカリスマ性は必需であり、その結果としてある程度の傲慢さも必要不可だと思う。
そして本作で描かれた傲慢な青年は慎太郎そのものであるように感じられた。人をあえて挑発し、侮辱し、平伏させる。自信に満ちた青年は狂気であり、凶器でもあった。
慎太郎はそんな主人公に我が道を貫かせる。けっして後悔の言葉は吐かせ無い。常人から見れば馬鹿げた主人公なのだが、慎太郎はそんな主人公を馬鹿げた青年として皮肉たっぷりに描く訳でもなく、逆に傲慢さを貫かせる事によって大人社会をストイックなまでに批判している。目線はあくまでも「怒れる青年石原慎太郎」で描かれているのだ。
本作はどの時代、どの目線で鑑賞するかによって大きく意味合いが違ってくるだろう。
ただし、我々は知っているのだ。原作者石原慎太郎という青年は、本作の主人公そのままの姿で大人になってしまった事を・・・
彼は主人公を死なせはしなかった。ラストで身体を引き摺りながら、ぼんやりとボヤケた光の方向へ這って行く主人公は負け犬の姿ではない。それはまるで傷だらけのヒーローのように描かれていた。あの光の先にあるのは、ぼんやりとした大日本帝国の未来だったのかも知れない。
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