[コメント] マイケル・ジャクソン THIS IS IT(2009/米)
この映画がマイケル・ジャクソンの真実を映し出したドキュメンタリーかと問われると、それは違うと答えざるを得ない。 あくまでもマイケルにささぐレクイエム、手向けの花でしかない。 彼自身、本意気を出して唄っているシーンなどほとんどないのだから、『THIS IS THE MICHAEL JACKSON』だなんていったら、本人も怒ってスリラーばりに墓場から出てきちゃうだろう。
だけど、そのマイケルにあこがれ、マイケルと同じ舞台に立つことを夢見てプロになったダンサー、ミュージシャン、スタッフたちは、つねにガチでリハーサルに挑んでいる。 彼らの高いプロ意識が、ただのメイキング映像に生命を吹き込み、ありふれた練習風景に清々しい感動を呼び起こす。
ある場面で舞台監督のオルテガがマイケルに問う。 「ミキサーにできることはあるかな?」 このわずかなやりとりこそ、この映画の底に流れているプロ意識を象徴している気がする。 成功という目標にむかって、我々は共に考えることができ、解決できる能力を持っている。 なぜなら、君と同様、僕たちもプロなのだから。 オルテガはマイケルにこう言いたかったのではないだろうか。
マイケル・ジャクソンという太陽の周りに集まった星たちは、ひとつひとつはまだ小さな存在でも、彼ら自身も輝きながら、太陽をさらに明るく照らし出す、はずだった。 それが彼らの夢でもあった。 ある日突然、太陽が、消えた。
冒頭、この映画はマイケル・ジャクソンの真実を映したドキュメンタリーではないと述べた。 だが、その周りのスタッフたちのリアルは伝わってきた。 この映画の主役は、突然太陽に去られた星々だったのかもしれない。
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