[コメント] マイマイ新子と千年の魔法(2009/日)
ただ坦々としてある。特筆すべき事件は爽快なまでに一時的に終わらされ,そこには地方の少女と、都会から来た転校生少女との交流が綴られるのみである。少女たちにとっての大事件も、大人たちには些細な出来事としか映らない。その自然さが素敵だ。
子供たちは、現実の新子たちの物語と、清少納言の物語の畳み掛けるような演出に理解不能に陥らないかと心配していたが、どうやら杞憂であったようで、案外深く見入っている様子だったのは嬉しかった(もっとも、米兵相手のパンパンなど、説明が必要な存在も見受けられはしたが)。
こうした映画にありがちな現実に対する問いかけなど、一切なかったことは正解であった。これは自然体の女の子達の姿に一喜一憂する映画である。それはそれで楽しく、美しい画面を見せてくれ、アニメーションに奇天烈な設定など、必ずしも必要でないことを教えてくれる。
自分は悲惨や舞台設定が現実をアニメ化させると以前書いたが、付け加えるべきは「生きた時代の空気が保たれているか否か」だと思わされた。またしてもナチュラルボイスを勘違いされた声優を務める子役たちはそこで苦戦しているが、描かれた絵は確実に高度成長期以前の田舎町と、それを巡る人々の息づかいを活写している。それは確かに、今の日本映画が描こうとして描き得ないものだ。
この作品の成功はストーリー・テリングによるものではない。物語を自ら描く絵だ。そこには確かに、命を湛えたこの町自身と、そこに息づく人々の生活がある。
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