コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 雪之丞変化(1963/日)

傑作だろう。他の作品では裏目に出ることも少なくない市川崑の特異な美的感覚が、ここではことごとく面白さに繋がっている。それはやはり悪趣味なものでもあるのだが、悪趣味もこの種のものであれば、「映画」はこれを歓迎する。
3819695

市川雷蔵勝新太郎なんか出ないほうが映画はスリムになるし、観客も物語に集中できるだろう。長谷川一夫闇太郎と山本富士子の物語への絡み方も中途半端だ。だが、これでよいのだ。そうでなければ崑演出のケレン味が面白さに昇華されることはなかっただろう。

長谷川雪之丞と若尾文子の異様きわまりないラヴシーン。真っ暗闇や霞などがもたらす演技空間の抽象化と、それによる運動感の向上(長谷川の軽やかでまろやかな身のこなし、スコープ画面を横切る縄、等々)。ジャズ・ミュージック。どれもが抜群の効果をあげている。また、若尾の美しさももちろんだが、私はこの山本をえらく気に入ってしまった。手で顔の片側を隠しながらピストルの狙いを定める姿には心底しびれた!

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (4 人)ぽんしゅう[*] 青山実花[*] パグのしっぽ[*] けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。