コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 孤高のメス(2010/日)

ありがとう。君は素晴らしいナースでした。
ナム太郎

劇中の当麻(堤真一)の台詞だ。そんな彼の台詞を用いながらではあるが、まずは本作を見事に引っ張った夏川結衣を筆頭に、堤真一余貴美子という派手さはないが堅実な役者たちに精一杯の拍手をおくりたいと思う。あとはもちろん監督の成島出にも「ありがとう。君は素晴らしい監督でした」との賛辞を。そう、これは、ヘタをすればシリアスに過ぎるようなドラマを、孤高の医師に恋する看護師という柱を軸に、彼が巧妙かつ実直な演出でみせた佳品である。

彼の演出はとてもオーソドックスだ。また役者に役者という枠の中で役者らしい演技をさせるという点も彼の特徴であろう。だから映画という枠を越えた何かを映画にも求める人や、もっと大仰な形での盛り上げを映画に求める人、あるいは劇中の登場人物ではないが、彼の力は認めつつもその古典的な作りには若干の違和感を覚えるという人には、彼の作品は少し物足りなく感じられるところがあるかもしれない。しかし逆に、彼の作風にまさに演歌のごとき古き良き時代の映画を感じるものにはたまらない作品であるとも言えるだろう。

スタッフのスタッフとしての最大限の力を導き出しながら、本人は決して驕ることなく自らの使命をただ淡々とこなす。しかしその手際は決して無駄なく、結果スタッフは再度彼のスタッフとなることを望んでやまない。そんな成島組の仕事ぶりがうかがえる、本当にいい映画だ。

私は成島出という人のことを(傑作・『八日目の蝉』の監督という程度にしか)詳しくは知らないが、ある意味、彼もまた1人の当麻であるのかもしれない。そんなことも思いながら心地よく鑑賞した。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (4 人)たろ[*] けにろん[*] セント[*] tkcrows[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。