[コメント] マイ・ブラザー(2009/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
トビー・マグワイアの物語が弱い。ヘリからのダイブ、捕われの木製牢屋など、まんま「ディア・ハンター」だ。極めつけは髭面のマグワイアで、あまりにデ・ニーロ顔なので驚く。ロシアン・ルーレットの代わりに何を出してくるのかと思っていたら鉄パイプという貧相な展開で、後々引っ張ることになる悪夢演出としては原典から数段劣る。
郷里ではジェイク・ギレンホールがキッチン改装に乗り出すが、ナタリー・ポートマンはメリル・ストリープのルックスを引き継いで、幼馴染の面々とのエピソードも「ディア・ハンター」の色が濃い。ギレンホールがマグワイア一家にすんなり溶け込む人物描写は二人の娘の使い方も含め、ジム・シェリダンの得意とするところで、サム・シェパードとの親子関係も奥の深さを感じさせる。雪景色の木橋を渡るシーンも美しい。
帰ってきたマグワイアの痩身もデ・ニーロのような役作りを思わせるが、ここからがマスターピースと袂を分かつ部分で、魂を失ったマグワイア(=クリストファー・ウォーケン)は主役に昇格し、救いの手を差し伸べる立場であるギレンホール(=デ・ニーロ)は、ポートマンとの不倫疑惑を機に身を引いてしまう。
ここはギレンホールとポートマンの愛情強化に向かうべきだった。家族は皆、ギレンホールに心が向かっている。だからこそ、マグワイアを救うことができるのはギレンホールただ一人、という展開に持っていける。
ところが映画はマグワイアのトラウマ究明に走ってしまうために、戦場の罪、という別のテーマがクローズアップされてしまう。狂気の迫力はなかなかのものだが、彼を自殺させない選択は良かったのか悪かったのか。その前、妹のバースディパーティーの緊迫感溢れる演出が凄かっただけに疑問が残る(あの風船の使い方!)。最後に告解する相手が妻というのもどうなんだろうなぁ。"Brothers"はどこへいった?
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (4 人) | [*] [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。