[コメント] インセプション(2010/米)
全編フルスロットルの怒涛の展開だけに緩急の調子はよろしくない部分がある。正直飽きてくる。 だがそれでも相当に力のある作品だ。映画史的な事件とまで云えば大袈裟だが「『ブレードランナー』級のグレート・ムービー」ぐらいは云ってもいいかもしれない。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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特にコクトー『詩人の血』にインスパイアされたのであろうシークエンス。ディリープ・ラオ(ユスフ)が運転するバンが橋から落下する超高速度撮影のカットにクロスカッティングされる無重力の中のジョセフ・ゴードン・レヴィットのアクションシーンが圧巻の造型。バンの中の人物達の緩やかな運動も出色。「もうこゝだけであとはどうでもいい」と思えるぐらい突出した面白い造型だ。
ちょっと批判的意見も書いておきたいのだが、上で「飽きてくる」と書いたけれど本作の構造上の問題もある。それは主人公達の死活(生き残るのかどうか)という部分での緊張の持続が放棄されている映画だということだ。観客は生身の人間の生死を賭けたスリルを期待し得ない。これは夢の話なのだから。そういったある意味マイナススタートの中で怒涛のアクション造型によってこれだけ面白い映画にしているという点を誉めるべきか。あと『市民ケーン』のバラの蕾に比べてもセンチメンタル過ぎるマクガフィンの扱いは少々恥ずかしい。また、ディカプリオとコティヤールは夢の中で50年一緒だったということで、ご丁寧に年老いた二人の後ろ姿と繋いだ手のカットを見せる。二人の愛の深さを強調しようというわけだが、ちょっとしつこいぞ。そして結局、渡辺謙を含めて登場人物は皆いい人ばかりで強烈な悪役が不在であるのも活劇としては物足りない。渡辺謙の扱いが大きいだけに余計に勿体無く思う。
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