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[コメント] 特攻野郎Aチーム THE MOVIE(2010/米)

知性も情感も欠いた馬鹿映画、ではない。現実らしさに根差さない作りはよい意味で馬鹿に違いなく、明晰なアクション演出も少ない反面、驚くべきスペクタクル造型や詩情さえ湛えたカットも複数紛れ込んでいる。後半部で少々ブラッドリー・クーパーが贔屓を受けているが、チーム内のパワーバランスも妥当だろう。
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がちゃがちゃと落ち着きのない撮影・編集はここ数年来(十数年来?)のよからぬトレンドに準じたものだが、その枠内で判定する限り、ビークル・アクションとしての平均点の高さは否定できない。「乗り物」と「落下」に対する度を越した執着ぶりによって『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』はアクション映画としての自己を規定している。「乗り物」が「落下」するシーン、すなわち高度数千メートルから落下中の戦車が砲撃の反動を利用して墜落地点を調整するシーンは、映画の荒唐無稽さが最高値を記録した箇所として印象深い。ここに加えて、序盤に設けられた空中戦もまずまずよく演出されている。しかし最も驚愕すべきはドイツの軍精神病院に入院中のシャルト・コプリーを脱出させるシーンだ。3D映画(“The Greater Escape”?)を上映中のスクリーンからAチームの車両が飛び出してくる! 甚だしく突飛でありながら、同時に『列車の到着』にまつわる「神話」さえ彷彿とさせる原-映画的着想である。このような「3D」シーンがあるから云うわけではないが、マウロ・フィオーレは『アバター』で得た名声を汚すような仕事を決してしていない。

終盤におけるコンテナが降り注ぐ画面、およびそれによって生じる内部の暗黒空間も志の低いルーティン・ワークでは絶対に実現できない驚愕の造型だ。この「暗闇」こそが映画の知性であり、詩情なのだ。冒頭、囚われのリーアム・ニーソンが手錠を解いて立ち上がり、襲ってきた犬とともに背後の暗闇に溶け込む――これがこの映画の最良のカットである。

(評価:★4)

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