[コメント] 乱暴と待機(2010/日)
もはや小池栄子が現代日本を代表する映画女優であることに疑いは差し挟めないにしても、作品のたびに驚かされるのはやはり浅野忠信だ。コメディ・センスだけを取ってもひとり抜きん出ている。美波らが笑いを外しかけても浅野がそれを救う。彼が出演していないシーンを見続けるには少々の努力と忍耐を要する。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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『VICUNAS』や『テトラポッド・レポート』などに顕著で、連作『亀虫』のような笑劇にさえも漂っていた、すなわちこれまでの冨永作品を特徴づけていたところの得も云われぬ不穏さ・禍々しさはほぼ消え去ってしまっている。三台の廃品業者トラックが通過し、そこから小池が自転車を掴み取るあたりにはかろうじて認められるか。続いてその自転車が浅野宅に投げ込まれるカットは、もちろんこういう驚きは大好きなのだけれども、期待したほどの映画的瞬間としては結実していない。他にも、自転車二人乗りや山田孝之と美波の川辺シーン、浅野(のボディダブル?)の屋根裏からの落下など、演出家が映画的瞬間の現出を狙ったと思わしき箇所は複数あるが、どれも大成功していると云うことは難しい。ただし、浅野が覗きをするシーンは面白い。二段ベッドの上段と天井間の距離がちょうどいい。
最も常識的な人物である(=観客と近い)はずの小池が、行動のうえでは最も非常識であるというのも面白さか。他人の家の窓ガラスを平気で割る。不法侵入する。「ここから出てけ」と脅迫する。包丁を振り回す。破水しても動じない。など。
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