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[コメント] クロッシング(2009/米)

死屍累々のブルックリン。奇抜な突出部を持たない代わりに重量級のドラマが統御されている。最先端のフォルムとは程遠い代わりにクラシックの風格を備えている。ビリングのトップにはリチャード・ギアの名が記されているが、最高殊勲俳優はやっぱりイーサン・ホークだろう。追い詰められた犬の顔である。
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**ネタバレ注意**
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日本題の『クロッシング』は両義的である。それぞれ無関係に生きてきたギア、ホーク、ドン・チードルの三人はともに「一線を越える」。しかし「交錯しない」。もちろん最終シークェンスにおいて彼らはニアミスをするし、それをもって「交錯する」と云うこともできるが(配給会社もそう解釈したのでしょう)、少なくとも「一堂に会する」というような明確な形での交錯ではない。それが現実らしさなのか作り物らしさなのかはこの際どうでもよい。「無情の世界」がブルックリンという街、さらにはアパートメントという一個の建造物、あるいは主演の三名に凝集されていくさまが「映画」なのだと思う。

アメリカ映画のお家芸である「夜の都会」はここでも見事に撮られている。その危険で美しい暗黒と艶に私はいつも魅了される。発砲の音響もいい。その音響の炸裂ぶりが「一線を越える=後戻りできない」ことを一瞬で表現する。ギア・ホーク・チードル以外の俳優では(ウェズリー・スナイプスももちろんよいけれど、いや予想を遥かに超えるすばらしさだったけれど!)ホークの同僚で友人のブライアン・F・オバーンの芝居が染みる。彼のような善良さが生きているから私は映画を見続けることができる。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)DSCH[*] jollyjoker[*] けにろん[*] ガリガリ博士

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