[コメント] グリーンホーネット(2011/米)
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予告篇から既に、退屈な駄作のオーラがこれでもかと匂っていたのだが、あのゴンドリーなんだから何かやってくれているのかもしれないと淡い期待を抱いて一応鑑賞。犯罪界の顔役チュドノフスキー(クリストフ・ヴァルツ)がグリーンホーネット抹殺を街のワルたちに指令するシーンでの、口伝えでネズミ算式に指令が拡散されていくのを画面分割で表現したり、悪徳検事スカンロン(デヴィッド・ハーバー)と寿司バーで対峙したブリット(セス・ローゲン)が、亡父とスカンロンの関係を一気に理解していくシーンでの、チープさがキュートな幻想表現、といったところにゴンドリー印が光ってはいたが、その程度でしかない。
終盤の、センチネル社を舞台としたアクションは、車ごとエレベーターで強引に上階へ昇ったり、後ろ半分が切断された状態の車が、およそ似つかわしくない新聞社のオフィスなどという空間を、目茶苦茶にしながら走る光景、或いは、激しい銃撃が行なわれる中でブリットが必死に試みる、ネットに音声ファイルをアップする行為が、新聞社という場所にあってはむしろ日常的だが、その時の事態に於いてはギャップがあるという、二重のミスマッチ感など、色々と面白いものが要素として揃ってはいる。だが、単純にアクションシーンとして評価すれば、ブリットがカトー(ジェイ・チョウ)と喧嘩をするシーンの方がうまくいっている。本来なら、敵との戦闘にこそ、肉弾戦としての気合いの入り具合が見られるべきなのだが。
チュドノフスキーは敵としての魅力が乏しすぎ、赤い衣装で変装しようとする行為も、それまでの彼のシリアスなキャラクターと違和感がありながらもそれが笑いに結びつきもせず、単なる違和感に終わる。彼が初登場するシーンでは、若い男に「俺のシマで商売するなら、納めるべきものを納めろ」と迫るのだが、相手はチュドノフスキーを怖れず、あんたは古い、過去の世代だから、あとは俺たちに任せて余生を送れ、と突っぱねる。「ケツにキスしろ」という決まり文句に凝った言い回しを付け加えるその台詞も含めて色々と面白いこの男こそがグリーンホーネットの敵であってくれた方が、観客も幸せだったように思える。早々に殺されて残念。
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