[コメント] シリアスマン(2009/米)
確かに何やら「凄味」とでも呼ぶべきほかないものがある。凄味なんて普通は結果的に出ているものであって、狙って出すものではないはずだが、おそらくコーエンはどうすれば凄味が出るかを綿密に計算した上でそれを実行・成功させている。矛盾を承知で云えば、それが彼らの底の浅さであり、底知れなさだ。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
一言で云えば「きわめてコーエン的な映画」ということになってしまうだろうけれど、それはつまり、ここでコーエンが目指しているものが新分野の開拓ではなく、持てる技術の精緻化だということだ。自らの民族的出自に材を取ったから、というわけでもないだろうが、コーエン純度とでも云うべきものは過去作と比べても最も高いかもしれない。この居心地の悪さはやはり稀少で、「歯の話」が展開されるシークェンスの話芸なんてこの上なく厭らしいが、凄い。そういう「底の浅さ」かつ「底知れなさ」であるところの「作られた凄味」が感心しつつも私がコーエンの全面的な支持者にはなれない所以ではある。とは云えラストカットのキレ、この結末部の処理の仕方はまさに『ブラッドシンプル』以来の冴えだと思う。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (3 人) | [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。